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吉上恭太さんの『ぼくは「ぼく」でしか生きられない』が刊行されました。

古書ほうろうで千駄木の頃から「吉上恭太のサウダージな夜」と題してずっとギターの弾き語りライブをしてくださっている吉上恭太さんが自らの来し方を綴られた『ぼくは「ぼく」でしか生きられない』が、かもがわ出版さんより刊行されました。

絵本の翻訳もなさっている恭太さん、そのことも本に書かれていますので、恭太さんにお願いしてそれらの絵本をお借りして店頭に並べてご覧いただけるようにしました。(お借りした絵本は販売はしていませんので、ご近所の方は往来堂さんへご注文ください)

12月5日には刊行記念に、吉上恭太さんと装画を描かれた漫画家の山川直人さんのトークショーも開催しました。

恭太さんは目指さない人生、山川さんは「漫画を描く」という大好きなことを続けるための方法として漫画家になることを選んだ人生。まったく違うタイプの生きかたをしてきたおふたりが、ほうろうでトークショーをしてくださったのでした。おふたりはとても仲良しでもあり、人の縁っておもしろいなぁ、巡り巡って出会うべくして出会ったおふたりなのだろうなと思いました。
山川直人さんバージョンの『ぼくは「ぼく」でしか生きられない』も読んでみたくなりました。

店頭では、12月8日(金)から29日(金)まで、山川直人さんの装画原画展もはじまりました。カバーのイラストのほか、挿画もすべて展示しています。細かな描き込みの原画からは、恭太さんの本に書かれている時代の空気も感じられます。ぜひぜひご覧にいらしてください。恭太さんの翻訳した絵本も原画に描き込まれています。目を凝らして探してみてください。
https://horo.bz/event/yamakawa-kyota_20231205/

 

陳列させていただいた吉上恭太さんの翻訳絵本のタイトルはこちらです。

『ゆきのひ』『あめのひ』『かぜのひ』
サム・アッシャー作・絵
徳間書店

イギリスの人気絵本作家によるシリーズ。
ちょっと憂鬱な空模様の日。おじいちゃんとぼくがおでかけすると、思いもかけないファンタジックな世界が広がります。

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『せかいいち しあわせな ぬいぐるみ』
サム・マクラブラットニィ文 サム・アッシャー絵
徳間書店

いまから50年ほどまえのこと、ある女の子がおこづかいをためて買ったクマのぬいぐるみ「ウーウー」。月日が経ち、持ち主が何人も変わり、ある日奇跡がおこります。

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『おねえさんになるひ』
ローレンス・アンホルト文 キャサリン・アンホルト絵
徳間書店

ずっとずっと赤ちゃんがくるのをたのしみにしていたソフィー。でも赤ちゃんが生まれてきたら、お父さんもお母さんも赤ちゃんにつきっきり。寂しいソフィーは家をとびだしてしまいます。

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『ようこそ!ここはみんなのがっこうだよ』
アレクザーンドラ・ペンフォールド作 スーザン・カウフマン絵
すずき出版

さまざまなバックグラウンドを持つ子どもたちが、お互いを認めあって学校生活を送ってる、スーザンの娘さんが通う小学校がきっかけとなって生まれた絵本です。イラストがかわいい!

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『ちゃんと たべなさい』『だめだめ、デイジー』
ケス・グレイ文 ニッケ・シャラット絵
小峰書店

おかあさんとデイジーちゃんのやりとりがほほえましい2冊です。
『ちゃんと たべなさい』は、2015年に箕面・世界子どもの本アカデミー賞絵本賞を受賞。「子どもたちから支持されている本を、子どもたち自身で選ぶ」という趣旨の賞に選ばれたことに、恭太さんのよろこびが『ぼくは「ぼく」でしか生きられない』にも書かれています。

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『ひとりぼっちのかいぶつといしのうさぎ』
『かしこいさかなはかんがえた』『くまくんと6ぴきのしろいねずみ』
クリス・ウォーメル作・絵
徳間書店

ダイナミックでありながらとても優しい筆致の絵が印象的です。
なかでも個人的には『ひとりぼっちのかいぶつといしのうさぎ』がすごく好き。
なんとも言えない複雑な余韻が残る絵本で、子どものころに読んだら心の置きどころがわからなくてちょっとトラウマのようになっていたかもとも思ってしまう。
恭太さんがご自身の本のなかで、原書を読まれたときの印象を哲学的な内容と表現されているくらいだから、わたしも大人だからといって簡単に理解できるわけではないけれど、恭太さんのおかげで出会えたすばらしい絵本。

『ヘイタイのいる村』入荷しました。

山形童話の会 編集
『ヘイタイのいる村』北の風出版/2,000円+税

共同創作『ヘイタイのいる村』
著者:鈴木実・高橋徳義・植松要作・笹原俊雄・槇仙一郎
発行:2021年3月25日
編集:山形童話の会 花烏賊康繁
発行:北の風出版
さし絵:齋藤二良

通販も承ります。1、または、2、の方法からお選びください。

  1. 直接やりとり+銀行振込(ゆうちょ、三菱UFJ) → フォームよりご注文ください。
  2. クレジット決済、コンビニ支払い → STORES
  3.   *コンビニ払いは手数料がかかります。

昭和33年「中奥日報」に連載された、鈴木実・高橋徳義・植松要作・笹原俊雄・槇仙一郎、5名による共同創作が、63年の時を経て書籍化されました。

戦後の山形に、頭上を米軍の砲弾がとぶ「砲弾下の村」がありました。
日本が戦争に負け、日本各地にアメリカ軍の基地がつくられたなかで、山形県の最上川沿い村山市一帯には〈大高根射撃場〉がつくられました。

‘砲座から撃たれる砲弾は村びとの頭上をとび、炭を焼き、山菜をとる山を崩し、途中で炸裂する砲弾が民家の壁をぶちぬいた。(鈴木実「はじめに」より)’

‘この長編童話は、無名の青年たちの共同制作であり、童話というよりは、基地という民族のシミをおしつけられた人たちの怒りと悲しみと嘆きを、基地の子供たちの生活に託した一つの民族の歴史である。(須藤克三「共同創作『ヘイタイのいる村』について」より)’

新聞連載ののち、『山が泣いてる』のタイトルで理論社から出版されていますので、読まれた方もいらっしゃるかもしれません。

60年以上の時を経て、原作『ヘイタイのいる村』が書籍化されたのは、著者のお一人、高橋徳義さんの遺された資料を託されていた花烏賊康繁さん(山形童話の会)が、コロナ禍で時間ができ、資料整理を思い立ち箱を開けてみたところ、新聞連載の切り抜きの束を発見したことがきっかけとなったそうです。
まさにその射撃場の村で生まれ育った花烏賊康繁さんは、「弾道下の村」の歴史を風化させてはならないとの強い思いから、書籍化にこぎつけられました。

また『ヘイタイのいる村』の副読本として花烏賊さんが著された『敗戦後、村は戦場だった』も重版され入荷しております。
ぜひ併せてお読みください。
詳細はこちら→

『敗戦後村は戦場だった』
1,000円+税
もんぺのこ別冊 No.12

花烏賊 康繁 著
山形童話の会 制作
北の風出版 発行

関連記事① 2021/2/16『山形新聞』
児童文学「山が泣いてる」の原点 村山の射撃場題材、「ヘイタイのいる村」書籍化へ

関連記事② 2021/2/24『河北新報』
戦後も砲弾の飛び交った集落知って 児童小説「ヘイタイのいる村」刊行 山形・村山

関連記事③ 2021/4/30『沖縄タイムズ』
米軍のトラックにひき殺された子を目撃 山形でもあった基地被害 歴史を伝える児童小説

わたしはたまたま『山が泣いてる』の挿絵を描かれた久米宏一さんのことを調べていて刊行を知りました。
「砲弾下の村」のことはまったく知りませんでした。
『山が泣いてる』も現在では入手しづらいため、歴史を残すのは古本屋の大事な役割ですので、ほんの少しでも貢献できればと思い扱わせていただくことにしました。

ちなみに久米さんは、古書ほうろうからもほど近い、小石川のお生まれです。
『山が泣いてる』の挿絵を描くため山形に通われるようになり、以来、鈴木実さん、高橋徳義さん、植松要作さん、笹原俊雄さん、槇仙一郎さんと親交を深められていたようです。

やさびしいかるた

今週は思いがけないことがありました。

「あの、以前千駄木のお店のときに、お店の前のスペースでかるたのイベントをしたいとお声がけさせていただいて、そのときに貸はらっぱ音地さんをご紹介いただいた者です。」

帳場の前に立たれたのは、読み札と絵札を正解で合わせるのではなく、言葉と写真をその時の直感で合わせるオリジナルかるた「やさびしいかるた」を作っているかわぐちさやさんでした。

千駄木の店のときに、前のスペースを使わせてもらうには、、というご相談だったと思うのですが、ちょっと条件的な難しさもあって貸はらっぱ音地さんをご紹介したのでした。
音地さんで初めて人前でイベントなさったのをきっかけにHAGISOさんで展示ができることになったり、大道芸 ヘブンアーティスト ライセンス認定を得たり、鬼子母神の手創り市に出店したり、といろいろ活動の場が広がっていったのだそう。
「すべてのはじまりはほうろうさんに音地さんをご紹介いただいたことから始まったのです。今年やっと流通できるかたちのかるたを作ることができたのですが、その矢先のコロナで、、でも今日、やっとこちらに来られました!」と、カバンから『やさびしいかるた』を出して、プレゼントしてくださいました。(せっかくなので販売用も1セットお預かりしました。)

うちが何かした、というより、かわぐちさんが一歩を踏み出したことで広がった、のですが、でも、そんなふうに何年もおもってくださってたのはうれしいです。
ここ最近はコロナにも政治もどんよりしがちでしたので、急に雲間から陽が射したみたいな明るい気持ちになりました。

かわぐちさやさんの「やさびしいかるた」(2,800円+税)
 1. 写真の札を場に広げます
 2. 言葉の札を読みます
 3. 言葉からイメージした写真の札を選びます
 4. なぜその札が合うと思ったのか、心の中でまたは言葉にして話をしてみましょう
https://yasabishii-carta.amebaownd.com/

ひとりでも多くの方に見ていただきたくて、店の入口すぐのレンガの壁に、絵札(写真)の一部を貼りました。
左下に読札(言葉)が置いてありますので、こっそり合わせて遊んでみてください。

 

水族館劇場『横浜寿町公演 FishBone 特別編集号』(2017)と、『総集編』(2018) お取り扱いしてます。

“横浜寿町 野戦攻城!
日雇労働者の四つ辻に藝能の宿神が転生し、
この世のような夢三部作の最終未完成版を乱舞する!
蟬時雨鳴り止まぬ太陽の季節に、
港町が娯楽の殿堂に変貌する
一大ページェント顕現!!”


2017年9月、横浜トリエンナーレのプログラムのひとつとして、横浜寿町で水族館劇場のテント芝居「もうひとつのこの世のような夢 最終未完成版」が打たれました。
ドヤ街のど真ん中、日々変貌し続けた〈盗賊たちのるなぱあく〉には、街の住人と、一見客が入り混じり、「アート」作品が野ざらしで展示されていました。
“アウト・オブ・トリエンナーレ”を標榜し、トリエンナーレの内側から「アート」とは何なのか、疑問を体現した水族館劇場。

白昼夢のように現れ、消えていった巨大廢園。
この公演を後の世に残すための2冊です。

 

青は公演に先駆け、黄色はすべてを終えて編まれた総集編です。

各 1,300円+税 2冊一緒にお買い上げの場合は、2,000円+税
発行:水族館劇場
編集:羽鳥書店

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水族館劇場『横浜寿町公演 FishBone 特別編集号』(2017)

道窮まり命乖くも  桃山 邑
どっこい人間節の街 ── 老いていくことの意味  野本三吉
寿町でブルースを  二見 彰
黒い翁(サトゥルヌス)の子供たち ──トリエンナーレを地底から撃つために  田中 純
序破急ならぬ、破序急、そして転々々……旅は続く  淺野幸彦
藝能の根源から  安田 登
地霊と共に生まれ変わる「この丗の夢」  大島幹雄
江戸文化のからくり  田中優子
天幕芝居の原像  翠 羅臼
桃山讃江  内堀 弘
観劇記 ── 水族館劇場「この丗のような夢・全」への返歌  三枝明夫
雑感 水族館劇場と写真家・鈴木 清 ── 夢と現のマージナル  鈴木 光
一九八七年、その頃ぼくは何をしていただろう  那須太一
寿の空をヒラヒラと  秋浜 立
誰のための芸術?  毛利嘉孝
水族館劇場が、地域アートに齎すかもしれないもの  藤田直哉
水族館劇場さんとの関わり  岡本光博
一夏の「幻」を捉えるために。  居原田 遥
楽日、寿町に行ってみよう(かな) 高山 宏
思ふ行くへの …… 。  中原蒼二
編集後記にかえて  矢吹有鼓

 

水族館劇場『横浜寿町公演 【総集編 2018】FishBone 特別編集号』

みえない境界からあふれでるように叫びとささやきが呼んでいる  桃山 邑
世の終わり 近づきくればいつの日か おれたちの出番くると知りそめ  野本三吉
とある実録・寿町  千代次
水族館劇場の寿町公演を観て  村田由夫
寄せ場寿町の夏  小林直樹
水族館劇場の芝居  佐藤眞理子
二〇一七年夏、横浜寿町に異変がおきた!  長澤浩一
「寿には娯楽がない」という  近藤 昇
今年の寿町夏祭り、何故いつもの場所でやらないんだろう?  石井淳一
盜賊たちの思い出のるなぱあく  癸生川 栄
月明かりに立って  相澤虎之助
るなぱあく古書街  宮地美華子
ゴドー達の街へ  津田三朗
あてにしないで待て もうひとつふたつの夢 この丗のような白昼夢(るなぱあく)  椹木野衣
「この丗のような夢」@寿町  逢坂恵理子
島と星座とガラパゴスと水族館劇場──「この丗のような夢 寿最終未完成版」公演顛末記  庄司尚子
台風への備え  野口敦子
水族館劇場の美学――「関係性の美学」でも「敵対性の美学」でもなく  藤田直哉
「水」の奇跡  毛利嘉孝
新生果実  村井良子
水族館劇場へようこそ  桑田光平
ジャズと演歌と桃山邑  佐藤良明
黒い翁  安藤礼二
孤独な熾火たちのために──「盜賊たちのるなぱあく」の名残  田中 純
鈴木清『天幕の街』より

 
総集編に、「るなぱあく古書街」を寄稿しました。

音の台所&春畑セロリ『ゼツメツキグシュノオト』絵本、CD、楽譜が入荷しました。

『ゼツメツキグシュノオト』というタイトルのすてきなデザインの絵本と、CDと、楽譜が入荷しました。

絶滅危惧種に指定されている生きものに思いをよせて作られた、絵と、詩と、ピアノ曲。
毎月、一種ずつ、彼らの鳴き声や習性から音楽的な特徴を見つけて、音の台所さんが絵と短い詩を書き、春畑セロリさんが楽譜1ページ分くらいの小さな曲を作る、音楽之友社のweb連載のなかでのお二人の共同作業から生まれた作品たちです。

生きものに音楽的な特徴?
すぐにはピンとこないかもしれませんが、
例えば、一番初めに登場する「リュウキュウコノハズク」は、南の島の小さなフクロウ。
南の島の日の暮れた森には、コホーッ、コホーッと雌を誘う雄の鳴き声が響くのだそうです。
音楽的な特徴は、「エコー」=反射音、こだま効果。
リュウキュウコノハズクは、「エコー」というタイトルの詩になって、ほら、月を見ています。
ピアノの曲名は「リュウキュウコノハズク」。

こんなふうに絵本では、左のページに、曲の中からもっとも特徴を表してる部分の小さな楽譜。
右のページには生きもの暮らす風景の絵と短い詩。

小さな楽譜を眺めて音を想像して、詩を小さく声に出して読んでみる。紅型染のようなきれいなグラデーションのイラストをうっとり眺めてるうちに、いつのまにか小さな絵本の見開きから、夜の森が立ち込めてきて、何か生きものの気配を感じてきます。そしてまた左の楽譜に目がいくとピアノが聴こえてくるようで…いつまでも絵本のなかを漂う心地よさ。
そしてこの楽譜、小さいのに何か不思議な魅力があるなぁと思ったら、この絵本のために音の台所さんが作ったオリジナル書体なんですって!

そんなふうにしてできあがった、18の絵と詩と曲たち。

1. リュウキュウコノハズク/エコー
2. リュウキュウアカショウビン/ポルタメント
3. エゾナキウサギ/ポコ・ア・ポコ
4. ラッコ/タイ
5. アオウミガメ/フェルマータ
6. アマミノクロウサギ/クレッシェンド
7. イリオモテヤマネコ/ソット・ヴォーチェ
8. ヤンバルクイナ/スタッカート
9. ナゴラン/トリル
10. リュウキュウウラボシシジミ/ピアニッシモ
11. サンゴ礁/デクレッシェンド
12. ライチョウ/パウゼ
13. ニホンリス/ヴィヴァーチェ
14. ホッキョクグマ/ラルゴ
15. クマゲラ/レッジェーロ
16. ニホンモモンガ/グリッサンド
17. チーター/プレスト
18. カカポ/コモド

こちらは、ニホンリス。音符を見るだけでもすばしっこい姿が目に浮かぶよう。

生物学方面の専門の方々も、この作品たちを後押ししています。
絵本、CD、楽譜とも、巻末には、科学コミュニケーターの深津美佐紀さんによる、それぞれの生きものたちの説明や、絶滅危惧種データが収録されていて、生物学的にもさらに詳しく知ることができるようになっているのです。
音楽と生物学を行ったり来たりできる!

CDには、音の台所さんによる詩の朗読も収録されています。内藤 晃さんの弾くピアノが繊細で優しくて、イラストにぴったり。

楽譜には、さまざまな上演方法が提案されています。店のピアノをちょこっと弾いてみてもいいですよ♪

以下は、楽譜のまえがき、総合地球環境学研究所の阿部健一さんによる「生物学者はピアノが弾けない」に書かれている文章の一部です。

“「絶滅危惧種」も「生物多様性」も、実は、われわれ生物学者が創った言葉だ。仕方がなかった。生き物のことを頭で考える人が多くなったから、難しい言葉を使って理詰めで説明しなければならなかった。でも生き物を想うときに必要なのは、心に響く言葉だ。本当に大切なことはやさしい言葉で語られている。
 その言葉を、音の台所さんの絵と春畑セロリさんの音楽がつくりだした。音楽は究極のやさしい言葉だと思う。頭ではなくて心に語りかける。”

そうか。学者のみなさんも、ほんとうは難しい用語ばかりではなく、生きものたちを優しい言葉で語りたかったのだ。生きものと出会うきっかけに、音楽という扉もあってもいいのだな。

音の台所さんとほうろうとは、不忍ブックストリート実行委員仲間でもありました。
ブルクミュラーのピアノ曲と童話を題材にした、ピアノと語りでつづる「音楽紙芝居」は、古書ほうろうでやっていただいたこともあります。
なので音の台所さんの作品がこんなふうにすてきな装いで、手に取れる姿になって、ご紹介できるのがもううれしくて!
ぜひぜひ店頭で実際にご覧ください。

ゼツメツキグシュノオト特設サイトもキュートです。あわせてご覧ください。⇒

発行:らんか社
絵と文:音の台所
音のモティーフ:春畑セロリ
本体1,800円+税

日本アコースティックレコーズ
曲:春畑セロリ
ピアノ:内藤 晃
文・朗読:音の台所
本体1,500円+税

音楽之友社
作曲:春畑セロリ
絵と文:音の台所
本体1,400円+税

宮里千里 録音『久高島 イザイホー』と宮里綾羽 著『本日の栄町市場と、旅する小書店』

 年末に大竹昭子さんから、ほうろうに合うと思うのよ〜と、音源集CD『琉球弧の祭祀 久高島 イザイホー』を戴きました。

 イザイホーとは、沖縄の久高島で、12年に一度行われる神職の任命式で、神事の多い久高島でも最大規模の祭祀ですが、経験者の高齢化や生活の変化に伴い、録音されたこの音源の1978年のイザイホーが、今となっては最後の開催となってしまっています。
 「エーファイ、エーファイ」という女たちの祈りのことばが、一直線に魂に飛び込んできて、知らず知らずのうちに凝り固まっていた身体が細胞レベルで一気に解放され、鳥肌が立ちました。

 さっそく大竹さんにお礼のメールをお送りしたところから話がとんとん拍子にすすみ、イザイホーの録音をした宮里千里さんと大竹昭子さんのお話会を、6月14日に古書ほうろうで開くことになりました。→宮里千里と大竹昭子のアッチャーアッチャーじゃらんじゃらん

 そんな流れから、1月に入ってからは、耳から『イザイホー』、目からは宮里千里さんのお店〈宮里小書店〉副店長・宮里綾羽さんが書かれ、ボーダーインクかr出たばかりの『本日の栄町市場と、旅する小書店』をお弁当のおともに読んで、夜は千里さんの『アコークロー』(ボーダーインク)、こちらは版元品切れのためネットで探して、那覇のちはや書房さんから送っていただいて読んでいます。

 そして『本日の栄町市場と、旅する小書店』は、名残惜しくも本日読了しました。
 読みながら同じく古書店を営む自らの日々を振り返るわけですが、この20年、買い物の仕方をはじめとする、生活スタイル、店の業務内容、いろいろが様変わりしました。ちょっと便利が行き過ぎたかなーと思います。遠くの人とは(錯覚も含め)近くなったけど、近くの人とは遠くなる、というか、意識してないと目の前にお客さんがいるのに、ネットの注文の返信や、何かを発信するのに夢中になっていたり、ねじれた日常が当たり前になりました。
 この本には、古書店の経営やノウハウではなくて、常連さんや、お客さんと綾羽さんとのやりとり、超至近距離のお向かいさんとの日常、市場のほかのお店の店主さんたち、それぞれ生きざま、人生がとても温かな視線で描かれています。ひとつひとつのエピソードが愛おしくて愛おしくて、あぁ、気をつけないとこういう大切なひとつひとつを失ってしまうなぁと。一年の初めに、とても大事なヒントが詰まっている本に出会えたなぁと思いました。
 そして本の構成も素晴らしく、後半の、父・宮里千里さんの『アコークロー』への反撃(笑)からはじまる、アコークローではまだ小学生だった綾羽さんが、ひとまわりして、親への感謝や、きっと心の中の一番大事なものを語ってゆく流れは、いま書きながら思い出して泣いてしまう。
 一編、一編は短くてとても読みやすい分量でいて、なんかもっとたくさんの文章を読んだような読後感は、綾羽さんの文章の素晴らしさだと思います。

 CD『琉球弧の祭祀 久高島 イザイホー』(2,000円+税)とともに、宮里綾羽著『本日の栄町市場と、旅する小書店』(1,600円+税)、そしてボーダーインクの新城和博さんが書かれた『ぼくの〈那覇まち〉放浪記』(1,600円+税)お取り扱いしています!

たのしみにしていた榎園歩希さんの『ひらがなえほん』が入荷しました!

9月に近所の〈ギャラリーHIGURE〉で、榎園歩希さんの「ひらがなえほん 原画展」を見ました。「あ」「い」「う」〜「ん」まで、46枚の絵が目の高さにぐるりと並んでいました。

「あ」だったら、あで始まる、雨、アヒル、アフリカ、アリクイなどがヨーロッパの絵本のようなちょっとくすんだようなトーンの色彩で描かれています。
おや、絵の具だけじゃない。糸も使われてる!その僅かな凹凸、針の運びを想像して胸が高鳴ります。

「い」は家、と途中まで見て、ん?ちょっと待って。ややや、もっと潜んでるゾ!
で、もう一度「あ」に戻り、あ、そっか、R(アール)だ。ところでこの糸で表現している花火みたいなのはなんだろう??「あ」のまんなかの線になってる試験管みたいなのは?

こんな調子で、20センチ四方ほどの小さな世界に潜む何かを探して、ありんこ目線になったり宇宙の果てまで飛んでったり、ぐわんぐわんしてしてきます。
「あ」の試験管はアルキメデスの原理、だそうで物理。「せ」では、正弦定理が描かれ数学と、どこまでも想像が広がる博物図鑑のよう!

在廊してらした榎園さんに絵本ができあがたったらぜひ見せてください!とお願いしたのでした。
そして出来上がった現物をお持ちいただき、すぐに古書ほうろうでも置かせていただくことに決めました。

展覧会のときにお聞きしたことで、なるほどと思ったのが、幼い頃にシュタイナー学校で一日かけてアルファベットを一文字ずつ学んだ、ということ。
書き方の練習で同じ文字ばかり繰り返し書いた記憶はあるけれど、私がひらがなを文字として、「あ」がきれいだなぁ、と思ったのは、中学の書道でかなを教わったときでした。そこからはアフリカにもアルキメデスにも行けなかったけど、充分大人になってしまったいま眺めても、「ひらがなえほん」はすこぶるたのしい絵本です。

お子さんと一緒に読むというか眺めると、きっと、ナゼナニ攻撃から、新たなる発見、一緒に考える、そんな時間が無限に広がりそうですよ。

榎園歩希 『ひらがなえほん』
ranbu出版 1,800円+税

収益の一部は都会で保護された野生生物のための資金に使われます。
ここに至るエピソードが榎園さんのブログで読めます。

11月30日までの木金土日(12:00〜18:00/LO 17:30)、神宮前の〈SW11+R〉にて、個展「ドット・マトリックス」開催中です。