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ダニエル・マチャド写真展『幽閉する男』

2022/11/16 - 2022/12/29

昨年冬青社より刊行された、ダニエル・マチャド『幽閉する男』の写真展を開催中です。

作品の舞台となるのは、ウルグアイの首都モンテビデオの没落した名家の廃れた邸宅。一族の者たちが一人また一人とこの世を去り、ただ一人残された独身の男を、カメラは捉えていきます。老境にさしかかったその男(ホセ)の表情や仕草にも得も言われぬ魅力がありますが、それと同じくらい、あるいはそれ以上に目を惹くのは、彼が自らを「幽閉」した屋敷そのものです。贅を尽くしたタイル敷きの床と朽ち果てたソファ、崩れ落ちた壁のそこここに飾られた額入りの一族の写真、もはや映らないテレビの上に集うアニメーション映画の人形たち。そうした一つ一つが手招きするように語りかけてきます。

日本在住のウルグアイ人であるマチャドさんとは、タンゴの取り持つ縁で出会いました。ご紹介くださったのは、一昨年、当店でオラシオ・サルガンの上映会をしてくださった西村秀人さん。マチャドさんも筋金入りのタンゴ愛好家であり、「ぜひここで写真展を!」と、とんとん拍子で話が進みました。マチャドさんにはタンゴそのものを主題にした作品もあり、顔合わせの日にはそれらも見せていただいたのですが、より惹きつけられたのは今回展示している『幽閉する男』の作品群でした。「これらはタンゴの写真ではない。けれど、その精神は完全にタンゴだ」というマチャドさんの言葉が、すとんと胸に落ちました。

日本では、ウルグアイというとまずサッカーを思い浮かべる方が多いでしょうけど、そのじつアルゼンチンと並ぶタンゴの本場でもあります(もっともよく知られた曲「ラ・クンパルシータ」も、「タンゴの王様」フランシスコ・カナロも、ウルグアイで生まれています)。そして、やはりアルゼンチン同様、戦禍のヨーロッパを尻目に繁栄を享受し、その後ゆるやかに、やがてはっきりと下っていったのですが、タンゴはそうした歴史と浮き沈みをともにしてきました。ホセの一族の栄枯盛衰をとらえた写真群は、20世紀のウルグアイの縮図でもあり、であるからこそタンゴそのものでもあるのです。

設営を終えた後、マチャドさんが「ギャラリーよりも、美術館よりも、ここがしっくりくる」と仰ってくれました。タンゴのレコードがかかる店内で、古本に囲まれながら観る『幽閉する男』、ぜひたくさんの方に体験いただきたいです。

 
 会期 2022.11.16(水)〜12.29(木) 会期延長しました!
 時間 12:00〜20:00(月火定休)
 場所 古書ほうろう
 アクセス

アーティスト・ステートメント

僕はウルグアイのノスタルジックな首都モンテビデオで生まれ、都会暮 らしが長いが、子供のころの数年間はウルグアイの田舎で育った。昔は豊かな「南米のスイス」として知られていたこの国に渡った、スペイン人とイタリア人の移民の子孫だ。そして、いつ果てるともしれない経済的、社会的、政治的危機の中で大人になった。こういう経験が自分の性格と環境適応能力を作っていったように思う。
ウルグアイ、アルゼンチン、スペインに暮らし、今は日本に住んでいる。 多文化的な生い立ちと、実際様々な国に住んできたという現実から、僕は、物ごとをより複雑な視点で眺めるという独特の能力を持つようになった。そして、今は主に日本社会の習慣、考え、構造を「外側から内側へ」観察している。

ラテンアメリカにルーツを持つことは、僕の強味だ。芸術としてのシュ-ルレアリズムとラテン文学的なマジックリアリズムのレンズを通して、社会の様々な側面と性格を読み解くことができる。写真は自分のルーツを探す助けとなる道具であり、写真を撮ることによって、自分自身の複雑さと同時に、自分がラテンと日本が混在した魅力的な状態にいることを目撃する。思い出、家、故郷にちなんだ「批判的」で、でも情緒的なイメージは、僕に独特のものだと思う。

写真を撮ることによって、僕は魅惑的な日本社会とその洗練された文化に対して、自分自身を再定義している。「移住」してきたラテンアメリカ人の僕は、ラテンと日本という、全く異なる、でも実は多くの点で補完しあえ、非常に人間くさいところが似ている、そんな二つの世界の掛け合わせを映像にしている。

写真を撮ることで、僕はやっと「世界にいる」ことができ、住んでいる場所に「根を下ろす」ことができる気がする。

ダニエル・マチャド


ダニエル・マチャド 公式サイト

詳細

開始:
2022/11/16
終了:
2022/12/29
イベントカテゴリー:

会場

古書ほうろう
池之端2-1-45 東京大学池之端門前
台東区, 東京都 110-0008 日本
+ Google マップ
Phone
03-3824-3388
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主催者

古書ほうろう
Phone
03-3824-3388
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