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往来堂コラボ「美しい装幀や凝った造本」ミニコーナー展開中です。

世界一美しい本を作る男 シュタイデルとの旅 DVDブック』(新潮社)の発売にあわせ、千駄木・往来堂書店で9月からはじまっている「世界一美しい本を作るフェア」に連動して「美しい装幀や凝った造本」を並べています。
10月も終わろうとしていますが、遅まきながらこちらでもご紹介を。

まずは当店唯一、シュタイデルが造った本。

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TALKING TO MYSELF by YOHJI YAMAMOTO 山本耀司
Carla Sozzani Editore srl Yohji Yamamoto Inc ¥25,000(+税) 2002年 2分冊
デザイン Claudio Dell’Olio
スキャン、印刷、製本 STEIDL
表紙、スリップケースはともにクロスのエンボスがほどこされ、ケースの上端と、二冊のうち一冊は作品集の背中がミシンで縫い綴じられています。もう一冊は、背中の綴じを出した開きやすい造りとなっています。
本文は、クレジットによると「Monadnock Dulcet Smooth」という紙が使われているようで、写真は息をのむほど印刷が美しく、また、新聞紙に描かれたラフ画も、印刷と思えないようなリアルさがあります。

次はご近所の編集室、信陽堂さんがつくられた本をご紹介します。

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前川英樹 著『zuhre』『zuhre 2』
信陽堂編集室 各 ¥3,500(+税) 2011年 / 2012年
装幀・造本・撮影:関宙明(ミスター・ユニバース)

美しい装幀、と言われて一番最初に思いついた本です。
彫刻家前川英樹さんが鑿を筆に持ち替え紡いだ物語。
第一集には、イーカロスの話、海天の塔の話、ソニドリの話、幽霊島の話、横たわる月の話。
二集には、トモカズキの話、前夜の話、ウィバーリの話、赤い花の話、夜光の子供の話、笑う山稜の話。
それぞれに、5編と、6編が収められ、話ごとに字体や文字組が変えられています。表紙は堅いボール紙に、花罫に囲まれたタイトルが、型押しされています。一集は、四角囲みで押された中に繊細な罫が浮き上がり、タイトルは白インキ。二集は、白いボール紙に赤、白の薄紙を二重貼りしてから型押しすることで、圧がかかった罫とタイトル部分が、釉のような不思議な色合が出ています。どちらも背中は綴じに寒冷紗が貼られた状態で、開きやすい造りです。私の説明ではうまくお伝えできませんが、ミスター・ユニバースのHPに写真がありました。
http://www.mr-universe.jp/site/works/pg95.html
http://www.mr-universe.jp/site/works/pg132.html

そしてこちらは台北〈田園城市〉という出版社の本。

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『朗讀違章』閱讀都市夾縫空間中的人情與氣息
田園城市生活風格書店 ¥2,000(+税) 2011年

〈田園城市生活風格書店〉は、書店であり、ギャラリーであり出版社。2012年の不忍ブックストリートでの企画「台湾で本を売ること、作ること」で知りました。ともかく社長の陳炳槮さんが魅力的な方で、エネルギッシュに、本づくりをめいっぱいたのしんでいらっしゃいます。
この本は、見せていただいた田園城市の本の中では、一見おとなしめの装幀ですが、そのコンセプトが型破りで、社風を表しているなぁと、出会った記念にほうろうで置かせていただくことにしました。
田園城市で力を入れているジャンルのひとつが建築で、1970年代の古い町の建造物を舞台にこちらは台湾の建築家がインスタレーションをした企画の図録です。これ実際に体験できたらさぞや面白かっただろうと思うのですが、建物の隙き間や、屋上に、思いがけない空間が創造されます。それらをどうやら正規の建築の合間に出現した「違法建築物」と表現しているようです。(語学力不足で誤読の可能性はありますが。) 動画もありました。youtube⇒ 「朗讀違章紀錄片」
そして、本の造りに戻しますと、表紙に堅いボール紙が使われていまが、全体の2/3くらいしかありません。これは、陳さん曰く、堅い紙の部分は、「法律」を表現していて、ない部分を「違法」を表現したのだそう。こんな遊び方は、クレームのことなんか考えてしまうと、日本ではなかなかお目にかかれないような気がします。これをやってのける勢い、〈田園城市〉天晴れ!です。

遊び心といえば、松田行正の主宰する牛若丸の本も、古本で在庫のあるものを並べています。

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デュシャンの代表作48点がカラーで再現され、切り取り線に従って切り抜き箱を組み立てると、デュシャンを封じ込めるというオマージュ本『アンフラマンス/梱包されたデュシャン』や、“読んでいるうちに落ち着かない気分になるように、すべて微妙な角度で傾かせてあります。”という表紙の型抜きも斬新な『変 2001』、写真家・杉本博司の作品に魅せられ天と地の境界線というコンセプトでつくった『borders』などなど、ぜひ手にとってご覧ください。