『ゼツメツキグシュノオト』というタイトルのすてきなデザインの絵本と、CDと、楽譜が入荷しました。
絶滅危惧種に指定されている生きものに思いをよせて作られた、絵と、詩と、ピアノ曲。
毎月、一種ずつ、彼らの鳴き声や習性から音楽的な特徴を見つけて、音の台所さんが絵と短い詩を書き、春畑セロリさんが楽譜1ページ分くらいの小さな曲を作る、音楽之友社のweb連載のなかでのお二人の共同作業から生まれた作品たちです。
生きものに音楽的な特徴?
すぐにはピンとこないかもしれませんが、
例えば、一番初めに登場する「リュウキュウコノハズク」は、南の島の小さなフクロウ。
南の島の日の暮れた森には、コホーッ、コホーッと雌を誘う雄の鳴き声が響くのだそうです。
音楽的な特徴は、「エコー」=反射音、こだま効果。
リュウキュウコノハズクは、「エコー」というタイトルの詩になって、ほら、月を見ています。
ピアノの曲名は「リュウキュウコノハズク」。
こんなふうに絵本では、左のページに、曲の中からもっとも特徴を表してる部分の小さな楽譜。
右のページには生きもの暮らす風景の絵と短い詩。
小さな楽譜を眺めて音を想像して、詩を小さく声に出して読んでみる。紅型染のようなきれいなグラデーションのイラストをうっとり眺めてるうちに、いつのまにか小さな絵本の見開きから、夜の森が立ち込めてきて、何か生きものの気配を感じてきます。そしてまた左の楽譜に目がいくとピアノが聴こえてくるようで…いつまでも絵本のなかを漂う心地よさ。
そしてこの楽譜、小さいのに何か不思議な魅力があるなぁと思ったら、この絵本のために音の台所さんが作ったオリジナル書体なんですって!
そんなふうにしてできあがった、18の絵と詩と曲たち。
1. リュウキュウコノハズク/エコー
2. リュウキュウアカショウビン/ポルタメント
3. エゾナキウサギ/ポコ・ア・ポコ
4. ラッコ/タイ
5. アオウミガメ/フェルマータ
6. アマミノクロウサギ/クレッシェンド
7. イリオモテヤマネコ/ソット・ヴォーチェ
8. ヤンバルクイナ/スタッカート
9. ナゴラン/トリル
10. リュウキュウウラボシシジミ/ピアニッシモ
11. サンゴ礁/デクレッシェンド
12. ライチョウ/パウゼ
13. ニホンリス/ヴィヴァーチェ
14. ホッキョクグマ/ラルゴ
15. クマゲラ/レッジェーロ
16. ニホンモモンガ/グリッサンド
17. チーター/プレスト
18. カカポ/コモド
こちらは、ニホンリス。音符を見るだけでもすばしっこい姿が目に浮かぶよう。
生物学方面の専門の方々も、この作品たちを後押ししています。
絵本、CD、楽譜とも、巻末には、科学コミュニケーターの深津美佐紀さんによる、それぞれの生きものたちの説明や、絶滅危惧種データが収録されていて、生物学的にもさらに詳しく知ることができるようになっているのです。
音楽と生物学を行ったり来たりできる!
CDには、音の台所さんによる詩の朗読も収録されています。内藤 晃さんの弾くピアノが繊細で優しくて、イラストにぴったり。
楽譜には、さまざまな上演方法が提案されています。店のピアノをちょこっと弾いてみてもいいですよ♪
以下は、楽譜のまえがき、総合地球環境学研究所の阿部健一さんによる「生物学者はピアノが弾けない」に書かれている文章の一部です。
“「絶滅危惧種」も「生物多様性」も、実は、われわれ生物学者が創った言葉だ。仕方がなかった。生き物のことを頭で考える人が多くなったから、難しい言葉を使って理詰めで説明しなければならなかった。でも生き物を想うときに必要なのは、心に響く言葉だ。本当に大切なことはやさしい言葉で語られている。
その言葉を、音の台所さんの絵と春畑セロリさんの音楽がつくりだした。音楽は究極のやさしい言葉だと思う。頭ではなくて心に語りかける。”
そうか。学者のみなさんも、ほんとうは難しい用語ばかりではなく、生きものたちを優しい言葉で語りたかったのだ。生きものと出会うきっかけに、音楽という扉もあってもいいのだな。
音の台所さんとほうろうとは、不忍ブックストリート実行委員仲間でもありました。
ブルクミュラーのピアノ曲と童話を題材にした、ピアノと語りでつづる「音楽紙芝居」は、古書ほうろうでやっていただいたこともあります。
なので音の台所さんの作品がこんなふうにすてきな装いで、手に取れる姿になって、ご紹介できるのがもううれしくて!
ぜひぜひ店頭で実際にご覧ください。
ゼツメツキグシュノオト特設サイトもキュートです。あわせてご覧ください。⇒★